だだちゃ豆栽培のこだわり
種は代々、自家採種
最近は育苗会社でも「だだちゃ豆系統」の種が外販されるようになりましたが、治五左衛門農園では、代々受け継がれ良いものを選抜した種から栽培をしています。
味や香りだけでなく、熟期(収穫期)、草姿(枝の大きさや形)、莢(さや)の形、毛の色、花の色に至るまでだだちゃ豆の理想とされてきた枝豆に育ったものだけを選んで収穫し、次年度へ残し続けるのです。
山形県鶴岡市の大泉地区には、何世代も前からこのようなやり方で、自分の家の種を家宝として守ってきた農家が存在します。
「在来種」というブランドと弱点
ところで、みなさんは「在来種(在来種)」や「在来作物(ざいらいさくもつ)」という言葉を聞いたことがありますか?
山形県の在来種について研究されている山形大学農学部教授の江頭宏昌先生によれば、「在来作物とは、自家採種などにより栽培者自身が種苗を管理しながら世代を超えて生活に利用してきた作物」としています。
(参照「在来作物の魅力と活用」江頭宏昌)
だだちゃ豆も在来作物の一つで、我が家でも種を家宝として代々受け継ぎ栽培してきました。また最近の研究では、だだちゃ豆は味だけでなく、健康にも良い栄養が含まれているということが分かったそうです。(後で詳しく述べます)美味しく、そして栄養価も高い作物と言えそうですが、しかし栽培には様々なリスクがあります。
「在来作物」を栽培する難しさ
だだちゃ豆の栽培でいうと、
・害虫や病気に弱い
・倒れやすい
・収穫量が少ない
・発芽率が低い
・種は糖分が多くカビやすい など・・・
品種改良された作物と違って、在来作物を栽培することは容易ではありません。種が土に撒かれた瞬間から、だだちゃ豆にとって過酷な自然との戦いが始まるのです。
だだちゃ豆本来の能力を引き出す
発芽率の低いだだちゃ豆。100粒まいても10粒しか発芽しないこともあります。毎年、春は「少しでも多く発芽しますように、、、」と祈る気持ちで種まきをします。
また、すべての生育ステージにおいて適切な成長の手助けをしてあげることが重要になり、水分量、養分量や種類などを、わずかな葉の色の変化や根の張り具合、成長スピードから判断します。治五左衛門では葉は大きく厚く育てることで、光合成能力を高め、食味を最大限に高める栽培方法をとっています。
リスクを取り、手間をかける
光合成の力を引き出す方法を実施する一方で、茎の節と節の間が伸び、倒れやすくなるリスクが出てきます。そのため、畑全面に支えになる棒(支柱)を立て、ひもを張る、という大変時間のかかる作業をします。これは、手間はかかりますが、自然の恵みをいただきながら、だだちゃ豆本来の美味しさを引き出せる方法なのではないかと考えています。
収穫適期を見極める「農力」
枝豆の収穫適期はわずか3~4日間と言われていますが、だだちゃ豆においては、おそらくピークは2日。品種によっては1日しかないものもあるように感じています。また、完全に熟すほんの少し前の方が美味しい品種もあります。見極めが本当に重要な作物です。
過去には、収穫遅れで食味を落としたり、早く収穫しすぎて実が薄くなってしまったり、たくさんの失敗もしてきました・・・
研究機関との研究活動
様々な研究機関(山形大学農学部、慶應義塾大学先端生命科学研究所、鶴岡高専など)との農業分野での研究のお手伝いをしています。特にだだちゃ豆の農業環境、農業機械、植物生産においては、様々な情報提供をしていただいています。
より多くの人が「在来作物・だだちゃ豆」のもつ美味しさを食して知ってくださり、より多くの研究者にこの地域の農業を研究していただけると、地域の農業が活性化します。それが「食」に関わるみなさんの元気・健康に、そして地域の活力つながると信じています。
治五左衛門 山形県ベストアグリ賞
最優秀「農林水産大臣賞」受賞
山形県ベストアグリ賞とは?
地域の環境を活かし優れた経営等を実践している先駆的な農業者に与えられるものです。このような形で私たちの農業方針をご評価いただけたことを嬉しく思います。ありがとうございます。